……本書は、最新の研究の結果に基づいて、美しいCGで恐竜の姿を再現した、至福の一冊といっていい。これまで恐竜を、一般的なメディアでしか目にしていなかった方にとっては、目からウロコが落ちる連続になるだろう。……
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本書の表紙に描かれたティラノサウルスを見て、それと気づかれる方はまだ少数派ではないか。なにせ、首の周りに、ネイティブアメリカンが頭につけている羽飾りのような羽毛を生やしているのだ。
本書ティラノサウルスの項目には、次のように説明がある。
最近の研究によれば、この恐竜が羽毛を持っていた可能性がある。地球史上最も恐ろしいハンターが鳥のような外見だったかもしれないのだ。
2004年に書いたコラム「
羽のある恐竜」で、ぼくは次のように書いている。
鳥が生まれた頃、地上には恐竜が闊歩していた。鳥類を恐竜の一グループと考える学者も増えている。柔らかく化石に残りにくいだけで、実は白亜紀後期の肉食恐竜には羽があったのではないかというわけだ。ぼくが子どもの頃、ティラノサウルスはゴジラのように直立型で想像図が描かれていた。今では脚の付け根付近を支店に、ヤジロベエのように、頭部と尻尾でバランスをとる図が描かれる。あと何年かすれば、鮮やかな羽毛で覆われた想像図が一般的になるかもしれない。
今ぼくの手元に、まさにその一冊がある。本書の表紙を手に、ぼくはしばし、感慨にふけったものだ。
この事例に表れているように、本書は、最新の研究の結果に基づいて、美しいCGで恐竜の姿を再現した、至福の一冊といっていい。これまで恐竜を、一般的なメディアでしか目にしていなかった方にとっては、目からウロコが落ちる連続になるだろう。
たとえば、第1章「恐竜の起源」冒頭の次の一節。
一見したところ、鳥類とワニは似ても似つかない。(中略)しかし、外見はあてにならない場合がある。実のところ、現生する脊椎動物でワニと最も類縁関係が近いのは、どちらかといえば見た目がワニと似ているトカゲやヘビではなく、鳥類なのだ。
へぇ、である。もちろん、ワニと恐竜や鳥類では脚と骨盤の関係が根本的に違う。それでもなお、恐竜をあいだに挟んで、ワニと鳥類は近い。
第2章からも引用しよう。
恐竜は、約2億3000万年前の三畳紀中期に、マラスクスのような2本足で歩くごく小さな肉食動物から進化した。そして、たちまち多様化し、獣脚類、竜脚形類、鳥盤類の三大グループに分かれた。
読み飛ばしてしまうと気づかないかもしれない。しかしこれは、おそらく一般には、知る人の方が少ない事実だろう。
恐竜は、二本足から進化したのである。
ブラキオサウルスのような四本足で歩く恐竜も、体重が支えきれなくなり、始終前脚を地面に着けるようになって、あのような形態となったのだ。
四本足から進化したわれわれ哺乳類である人間の常識とはかけ離れた事実。それこそが、進化のロマンである気がする。ぼくたち人間の常識を打ち破ってくれる、太古の姿。
恐竜は奥深い。本書は、美しい図版からだけではなく、要所要所の解説文からも豊かな知識を汲み取れる泉だ。
ぜひ、堪能されたい。
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