ジョン・ホーナー博士らが、モンタナ州ヘル・クリークの化石発見状況を調査し、ティラノサウルスの捕食状況や白亜紀末の恐竜多様性などについての見解を発表しています。
T. rex more hyena than lion
The ferocious Tyrannosaurus rex has been depicted as the top dog of the Cretaceous, ruthlessly stalking herds of duck-billed dinosaurs and claiming the role of apex predator, much as the lion reigns supreme in the African veld.
But a new census of all dinosaur skeletons unearthed over a large area of Eastern Montana shows that Tyrannosaurus was too numerous to have subsisted solely on the dinosaurs it tracked and killed with its scythe-like teeth.
Instead, argue paleontologists John “Jack” Horner from the Museum of the Rockies and Mark B. Goodwin from the University of California, Berkeley, T. rex was probably an opportunistic predator, like the hyena in Africa today, subsisting on both carrion and fresh-killed prey and exploiting a variety of animals, not just large grazers.
タイトルになっているティラノサウルスはライオンじゃなくハイエナのようだったというのは、捕食動物と獲物となる動物の比率からそう考える方が合理的という話です。たとえばライオンだと、獲物となる動物の数の3分の1か4分の1程度の数でないと、エネルギーが充分にまかなえないのに対して、ハイエナのようにときには死肉もたべたりするのなら、2分の1程度の数であっても、みずからの集団を維持できるといいます。
そこで、ティラノサウルスの数を、獲物となっただろう植物食恐竜の数と比べると、けっこう多くて、ライオンというよりハイエナのようにいろんな形で肉を食べたと考えないといけないという指摘です。
最後に著者らは、地層の上部と下部(白亜紀末とそれより少し古い時代)の状況を比較し、もうひとつ注目される指摘もしています。現在も議論が続いている、恐竜絶滅の原因はほんとうに隕石の衝突だったか、という話に関して。隕石の衝突は事実ですが、それだけが直接的原因だったか、という疑問ですね。
ホーナーらは、恐竜の多様性のピークは、いまから7500万年前で、その後、数を減らし、隕石が衝突した6550万年前には、ずいぶん減っていたと指摘しています。このあたりはPearsonらが「The Hell Creek Formation and the Cretaceous-Tertiary Boundary in the Northern Great Plains(2002)」で述べたこととは対立する見解ということになるようですが、どうなのでしょう。この件、まだまだ議論が続きそうです。
論文は下記。
Dinosaur Census Reveals Abundant Tyrannosaurus and Rare Ontogenetic Stages in the Upper Cretaceous Hell Creek Formation (Maastrichtian), Montana, USA
PLoS ONE 6(2): e16574. doi:10.1371/journal.pone.0016574