[caption id="attachment_1477" align="alignnone" width="300" caption="池田忠広研究員"][/caption]
1.米国古脊椎動物学会(SVP)とはどんな学会なのですか?
正確には覚えていませんが、約60カ国2500人以上の人々が会員になっている学会で古生物系では一番大きな学会だと思います。
今回参加したのは毎年行われている例会で、アニュアルミーティング(Annual Meeting)といいます。今年はピッツバーグで開かれましたが、来年はラスベガスで開催される予定です。
2.学会にはどういった人たちが集まるのでしょうか?
世界中の研究者やプリパレーター(技術員)といって、化石の処理をしたり、標本の整理をしたりする専門家の人たちなど、多くの人が参加します。
アメリカの方々だけじゃなくて、世界中の人が参加します。アジア系では日本人が多いですね。日本人はだいたい毎年10人以上は発表しているのかな。去年と一昨年は日本人が名誉ある賞を取りました。
今回の学会では、口頭発表・ポスター発表あわせて約700人が発表していました。私はポスター発表を行いましたが、ポスター発表者は全体で450人くらいいました。発表するためには審査があって、エントリーした全ての人が発表できるとは限りません。学会では最先端の研究成果が発表されるので、よい情報収集の場になっています。
学会は4日間に渡って開催され、朝の8時から夕方の4時まで口頭発表があってその後にポスター発表があります。ポスター発表は100人くらいが毎日交代で発表します。
3.会場はどんなところでしたか?また参加者の雰囲気はいかがでしたか?
毎年学会は有名で大きなホテルの協力のもとに開催されます。今年の学会はウェスティンホテルの協力のもと、ホテルに隣接するコンベンションセンターで行われました。
[caption id="attachment_1498" align="alignnone" width="300" caption="会場の様子(池田研究員提供)"][/caption]
会場の雰囲気はなごやかです。ウェイティング・バーがあって、みんなで軽くスナックをつまんでお酒を飲みながらポスターの前で話をします。海外の学会ではそういうことが結構あります。その方が緊張も打ち解けやすいのかなという気がします。
4.参加の目的は?
海外の研究者に向けてアピールするためというのがあります。国内に化石が出たという発信はわりとメディアを通じてできますが、海外の研究者へのアピールはなかなかできない。だから日本の兵庫県というところから「こういうのが出ている」というのをアピールする目的があります。
また発掘で出てきたものの途中経過を発表することでいろんな情報を得られますし、今後の議論の方向とか、自分が気になっていることについて他の研究者からアドバイスもらったりとか、聞いてもらったりとかありますね。そういう点で行く意味があると思います。
5.発表の概要について、簡単に説明をお願いします。
簡単に言うと恐竜と一緒に産出したカエル類化石の産出報告です。今回は簡単な産出報告と、現段階における系統解析の結果発表をしました。また二次的な狙いとしては、ひとはくのクリーニング施設のアピールです。こういう技術を持っている人がいるというアピールをしました。
6.池田研究員の発表に対してどんな反響がありましたか?
化石を研究では、系統解析(進化の過程)を行う場合があります。その際、私たち研究者は化石の色々な特徴を調べでデータ表を作り、それをもとに解析を行います。例えば頭の縦の長さが何cm以上とか、何cm未満とか。そういうことを示すデータが数十個あって、それをコンピューターで解析して系統樹を描きます。その時に使ったデータ表の元を作った専門家が僕の話を聞きに来ました。中国の古脊椎动物与古人类研究所(中国の古脊椎の研究をしているトップ機関)の人で、非常に興味深く発表内容を聞いて行きましたよ。有意義な議論もできましたし、数多くのアドバイスもいただきました。今後も色々と情報交換しようと、名刺を頂きました。彼のようなカエル類化石の第一人者とお話できて色々と議論できたことは、今回の学会のなかで最大の成果でした。
7.ご自分の発表以外の時はどのように過ごされましたか?
気になる発表を一日中聞いていましたね。恐竜や他にも爬虫類、ワニ類、カエル類のセッションもありました。そこで全体的な学問の流れとか研究方法の流行りなどを確認しました。
毎年研究の新たな手法や流行りの手法というのがあります。そこから例えば、今自分が考えている今後の展開とアイデアが同じでないかとか、同じ手法で研究している人がいれば、こういうやり方があるんだとか。その時に使っているデータやソフトもチェックします。まぁ(英語なので)全部は聞きとれないですけど…。
8.今回の学会でもっとも気になった発表についてご紹介ください。
専門分野であるカエル化石で、中国から新しい種類の化石が発見されたという発表です。
他にはコンピューターグラフィックスとレントゲン透過の手法を使って行う化石の研究です。具体的には、鳥が歩いている状態をレントゲンで透過して実際の骨の動きを調べて、その情報をもとに絶滅生物の骨の稼働範囲を調べるというものです。このような新たな技術を使った研究は、日々開発されていきますので、日々情報収集していかないと時代から取り残されていきますね。
9.SVPは学術的な評価だけではなく参加そのものが楽しめる仕掛けに満ちていると聞いたことがあります。いかがでしたか?
以前は、賞の授賞式も兼ねたパーティーがありました。みんな正装してフランス料理のフルコースを食べながら懇談していました。
他にもオークションもありますね。恐竜のかぶり物とか、自身の文献集とか、参加者が色々ともちよります。復元画家の方は自分の描いた絵とかも出品していました。オークションでのお金は学会に寄付されます。とてもにぎやかです。
また一昨年くらいから造形師や復元画家の方々のコンテストもはじまりましたね
[caption id="attachment_1497" align="alignnone" width="300" caption="会場の様子(池田研究員提供)"][/caption]
10.協議会や丹波地域の人々へのメッセージをお願いします。
篠山層群という篠山市・丹波市に広がっている地層からは恐竜もすごいですけれど、いろんな小さい生き物がたくさん出ています。世界的にも価値が高い化石層です。今後もいろんな発表を期待していただくと同時にご協力をお願いします。これは兵庫県だけでなく、日本の財産になるものだと思いますので、そういう視野で活動を続けていければよいと思っています。
池田研究員、お忙しい中、ありがとうございました。学会のこと、研究のことなどわかりやすく丁寧に答えていただきました!そんな素敵な池田研究員がいらっしゃる兵庫県立人と自然の博物館のHPはこちら(http://hitohaku.jp/)!博物館では、恐竜やカエルなどの小動物の化石や化石をクリーニングする様子を見ることができます!
兵庫県立人と自然の博物館・池田研究員に10個の質問!
2010年10月10日~13日にアメリカ・ピッツバーグで
米国古脊椎動物学会(SVP:The Society of Vertebrate Paleontology)が開かれました。
丹波から発見されたカエル類化石について発表を行った、
兵庫県立人と自然の博物館(ひとはく)の池田忠広研究員に
学会の様子や発表について10個の質問に答えていただきました!
インタビュー日:2010年10月29日(金)
場所:兵庫県立人と自然の博物館 ひとはく恐竜ラボ